少年はいつも元気だった。
        よく笑い、よく食べ、よく動く。
        そんな、どこにでもいるような無邪気で明るい男の子。
        
        少年は旅をしたかった。
        離ればなれになってしまった両親に、もう一度会いたいという思いがあったからだ。
        少年は口には出さなかったが、共に暮らす青年だけは、それを知っていたのだった。
        
 
        しかし、少年の暮らす小さな村の周りには深い森がある。
        人の足では脱出することが出来ず、乗り物を運転する技術を持たない少年の行く手を阻む。
        それを青年に相談をしたが、共に旅立つことを許してはもらえなかった。
        
        来る日も来る日も青年を説得した。
        普段は仲の良い二人だったが、口喧嘩になることもあるくらいだ。
        
        少年は自分の無力さが嫌いだった。
        
        
        
        嫌な気持ちになったとき、少年はいつもここに来る。
        時々、森が憎くなることもあるが、どうしてだろうか。
        自然に囲まれていると心が落ち着くのだ。
        
        寂しさだって、辛い気持ちだって忘れることが出来る。
        明日こそは、と前を向くことが出来る。
        
        だから今だけは、もう少しここに……。