空の果てには、何があるのだろう?
        
        一度だけ、父にそう尋ねたことがある。
        フライト・ランドが幼少期に暮らした町は、雨がよく降る荒れたところであったが、
        一度だけ、綺麗な空を見たことがあった。
        
        
        幼いフライトは、たびたび生きていることに嫌気が差すことがあった。
        
        喧嘩に負けたとき。
        町の住人に理不尽に殴られたとき。
        お腹が空いて倒れそうなとき。
        淀んだ空気のせいで病気をしたとき。
        
        世界の全てに嫌気が差した。
        
        このままここで生きていても意味がないのではないか?
        なぜ生きなければならないのか?
        
        思考がぐちゃぐちゃになったとき、
        元飛行機乗りである父に無理やり連れられた場所が、空であった。
        
  
    
        自由だ。
        
        怖くて足が震え、涙が止まらない。
        鼓動が高鳴り、自分はまだ、この世界を生きたいと思った。
        
  
    
        空を飛んだのは、その一度きりであったが、フライトが死にたいと思うことがなくなった。
        
        
        ひっそりと、自分だけの夢が出来た。
        今度は自分が機体を操縦し、本当の自由を知るのだ。
        
        どこまでも遠く、遠く、世界の果ての果てまで……